2011年12月28日水曜日

Tous les Matins du Mond

映画「めぐり逢う朝(Tous les Matins du Mond)」のDVDが再販されていたようだ。17~18世紀フランスの作曲家であり、ヴィオール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)奏者である、サント=コロンブとマラン・マレの物語である。
映画を見たいと思ったときは、中古のDVDが高すぎて買えず、まずサントラを買った。このアルバムは、ほとんど曲をスキップせずに、一枚丸ごとに近く聞ける愛聴盤で、音楽監督と演奏はJordi Savall。
結局、映画は、どうにかこうにかして見たのだが、もう一度ゆっくりと見たいというよりは、断片をつなぎ合わせておくだけでいいかな、と思う。サントラでかなり堪能できる。


もちろん、美しい映像の映画で、押しつけがましい台詞はなかったように思う。忠実な時代考証も面白くて、最初の方は食い入るように見た。なかでも、みんなの衣装が、洗濯したてのような真っ白い衿を付けているのが印象的だった。衿だけは頻繁に洗えそうである。


だが、その時代考証があだとなっているのは、青年マラン・マレが宮廷音楽家となって出世をし、壮年期・老年期になると、見事な「(容姿の)変態ぶり」に、全く楽しめなかったことだ。ドパルデュー父子が交代して演じているのだけど、誰もが、あの「aged Marais」(YouTubeコメント欄にあった)にはがっくりしてしまうだろう。再販される前のDVDは3,4万とふっかけていたが、再販価格は3800円くらいで、この落差以上のものがある。


それに、サント=コロンブの姉娘が、不憫でならない。亡き母は、サント=コロンブの思い出の中で、いつまでも瑞々しく美しい。コロンブは頬に涙を伝わらせながら、妻(の亡霊)を前に弾いている。静謐と陰影に重点を置いたという映像で描き出される。
娘たちは昼間の世界にいた。池での水遊びや明るい笑顔。だが、マレが宮廷に出入りしだした頃、姉娘は変わらずに簡素な家で家事をし、畑を耕している。マレとは一緒になれずに病気になり、かさかさと干からびていく。大きくて重たい寝台。乾いてかたかたと鳴り出しそうな家具調度。色のない部屋。父親コロンブの艶やかに光るヴィオールと比べて、何と素っ気ないことか。


wikiによれば、コロンブは愛娘二人と自宅で音楽会を催していたというので、姉娘は不幸ではなかったと思う。


Tous les Matins du Mond より


「Improvisations sur les folies d'Espagne」
Marin Marais


「L'arabesque」
Marin Marais


「Marche pour la ceremonie des Turcs」
トルコの儀式のためのマーチ
Jean Baptiste Lully

 

死ぬ間際、横で弾き始めるマレに、どのように弾くべきか伝えていました。
二言三言で。楽譜に付いている速度記号のように。
La Reveuse


再び「Marche pour la ceremonie des Turcs」
映画とは関係ありません。
演奏 Orquesta Barroca Eutherpe