2011年12月30日金曜日

手ぶらでは戻らない

ずいぶん前の話だが、繁華街の長い歩道が工事中だったときのこと。
狭くなった道幅のせいで、私は歩道の端から、とび職姿のお兄さん(若者の意味)の後ろについて、ずっと歩くことになった。工事のもう一方の端には3,4人の作業員のお兄さんたちが座っていて、休憩を取っていたように見えたのだが、私の前を歩いていたお兄さんがそばまで来ると、その一人が大声で怒鳴った。


「手ぶらで戻ってくるなよ」


先輩格のお兄さんに言われて、私の前を歩いていたお兄さんの、のんきな感じが吹き飛んだ。このお兄さんは、端っこの現場で指示された仕事を一人で済ませてきたのだろう。でも、作業が終わったら、気配り、目配りをして、何か片付けられるものや必要なものを見つけて、持ち帰るべきだった。


この時以来、私も家の中を行き来する度に、出来るだけ手ぶらにならないようにしている。だけど、反復横跳びで何でも手が届く家なので、そんな必要もあまりない。


私は手ぶらというか、手持ちぶさたで、人生を過ごしてきたような気もする。でも、今は何かしているふりをしなくて済んでいる。
大変幸せなことだと思う。




lenine
Hoje Eu Quero Sair Só acustico
 わたしは一人で出かけたい