2012年12月30日日曜日

わたしの話は変わらない

帰省してきた友人と会うことになった。

待ち合わせをしてから寒い中、隣の隣くらいのご町内へ歩いて出かける。散歩にはちょうどよい距離で、市内電車の音が響き、すれ違う人がまばらに現れてくる休日の歩道をただ西に進んで、街角にある、おフランスのケーキ店に着いて、二階に上がる。
がらんとした板張りの空間に大きなストーブが燃え、小さなテーブルと椅子があちこち置かれて、足音も椅子を引く音も響く。お客はほとんどいない。去年食べた、表面が琥珀のようなキャラメルでナッツが入っていたケーキを食べようとして、名前が思い出せない。一階からケーキをひとそろい持ってきてくれて選べるのだが、その日は作っていなかったようで、別のケーキを食べることとなった。友人は5種類のケーキが載ったプレートセットでお得。
食べながら、友人の仕事の話を聞く。

昭和の初期からあるというこの店は、一階のフランス菓子店とは別経営らしいのだが、レトロ喫茶のように艶々としているわけでもなく、意外と簡素で素っ気ない。階段の踊り場、階段を上がったところにあるホールとか二階席を広く大きくしたような感じで、奥の厨房側が暗くて通りに面した窓際が明るい。
友人からいろいろと聞いて帰った。3月に遭遇した地震のことや仕事のこと。長いお茶の時間だった。

と、書いたのが今年の初め頃だった。
友人の話が面白くて、そのことを書こうとしたらまとまらず、ほぼ一年が経ってしまった。
その友人とまた会うことになったが、今回は年明けではなく、年末である。

やはり同じように待ち合わせをして、歩いて同じ店に行った。

友人は転職をしていた。

それもまたとても面白い話で、聞いていても喉が渇くので、今日はおフランスのケーキ店2階をちょっとだけ早く切り上げて、近所の商店街にある喫茶店にも寄った。最初の店が「広島で初めてクレープを出した店」なら、次のは「広島で初めて(公式記録では日本で最初に)モーニングを出した店」らしい*。
どちらもゆったりと過ごせて有り難いのだが、前者はタンブラーに氷が入っていなかった。後者は氷が入っていて、清々しかった。
前者が「房州」、後者が「ルーエぶらじる」という。

ぶらじるのほうにも、その友人と一度寄ったことがあって、アメリカのヒマワリ農場の話を聞いたことがある。
ぶらじるは、別の友人がトイレが面白いと話してくれたことがあるのだが、お店が改装する前のことだったと思う。改装したといっても、かなり前のことだったかな。というのも全く今風ではなく、それが商店街に合っているのだが、奥の座席は小さな中庭が望めて、表とは違う空気感だった。
また、お店の階段下には雑誌や新聞を並べてあるブースがあって、二人分くらいのカウンター席を作ってあるのが、面白かった。今回もトイレは利用できなくて残念。

もう日が落ちかけていたので、また歩いて待ち合わせをした場所に戻る。プレセールや歳末の福引きなどで、人がごったがえしている。
まだ年が明けていないことを忘れていた。なのに、これだけの人混みの中でも、もうあまり関係ない気がした。
それに今日は暑かった。この記事の出だしとは全然違う暖かさで、房州はストーブを出していたのだろうか。これが全く思い出せない。入ったときは、もわっとして暑苦しいくらいだった。


いろいろと盛りだくさんに話を聞いて帰ったから、夫にも覚えている限りの話を伝えた。夫も友人のことをよく知っている。
私の話を聞きながら、夫はテーブルの上に両手を置いて、
「いやあ、去年とは全く違う世界にいるよね」と言って、
掌を返した。本当に、180度違う世界にいた。