2012年7月22日日曜日

分けられる幸せ

母のことだが、今、関東にいる。ほぼずっと末っ子と一緒に暮らしていて、10年近く前、転勤に伴って付いていった。関東は内陸部の暑さも寒さも厳しいところで大丈夫だろうか、それより関西での暮らしが長いから、生活が合うだろうかと気にはなったが、年の割には柔軟に適応したようだ。
知らない土地のほうが、のびのびと出来るのかもしれない。


私は、母と時折、荷物のやり取りをしている。母の日などの定例的なものとは別に、関東では売られていないものや贈答品を頼まれて送っている。母からは、野菜や食品などがお裾分けで送られてくる。野菜は、母の古い知人が届けてくれるものである。
送料のことを考えると、遠方から届いた野菜をさらに私のところまで、わざわざ送ってくれなくてもと思うのだが、こちらでは見かけない食品や品物も混ぜて送ってくれる。


でも、中にはネットで購入すれば無駄が無くていいのに、と思うものがある。元々、私の母やきょうだいはビジネスライクで、お互いを「慣れ親しんだ他人」「ちょっとものを頼める間柄」として気が合う、という感じで接しているくらいだ。思い返せば、かなり前は荷物のやり取りも少なくて、独立した家計同士ということで、親子間で費用を精算していたこともあった。これは、私の母もきょうだいも、計算したり数字を出すのが好きだったせいでもある。
そんな人たちから、何回かに一度は、どこでも買えそうなものを丁寧に依頼されると驚いてしまう。


また、そもそも母が知人から、それこそお心遣いで余分に頂く野菜も、ご近所にお裾分けできればよいのだが、どうもそうはいかないらしい。確かに、私自身もこの数年は、近隣へのお裾分けをしていない。今時、ご近所にお裾分けするほうが不自然で常識がないように思われる時代になっている。
仕方なく親子間で荷物を送り合って送料や手間を掛ける、ちょっとしたこの無駄も、世の中に必要なものかもしれない、とも思う。


こうして、関東に越してからの母と荷物のやり取りをしていると、連絡し合うことが増えたし、ほんの少し何かサービスをして一品でも添えて送りたいと思う気持ちが出てきた。どこでも買えそうなものをリクエストされるのも、荷物のすき間埋め以上に、向こうの気遣いかもしれない。私は、今や人から、ものを頼まれることがあまりない、哀しい人間なのである。
その点でも、あるときはプラスαで、あるときは本当にお気持ち程度で、中身は笑ってしまうようなものばかりにせよ、分け合ったり受け取ってもらえる相手がいるのは、なかなか幸せなことだと感じる。だから、イギリスでは、どんな貧しい人も遺言を残したのかもしれない(当ブログ「分ける歌」2012.6.270)。


ところで、分けあうことでものが循環し、皆が幸せになっていく客家のシステムを読んだことがある。どなたかがご紹介されていた、スピリチュアル系のサイトでのインタビュー記事の中にあった(*後注)のだが、雑食性で何でも読む私は面白く読ませてもらった。
経営コンサルタントで小田さんという方がいらっしゃって、その方の子ども時代が後半語られる。おうちの事情で子どもの頃から苦労をされているが、パチプロになったお母さんに体よく働かされて、これからどうなるんだろう、どうなるんだろうと興味津々に読んだ。淡々とした語り口で、可笑しい。よその人の人生は「語って」もらうと、可笑しなことをいっぱい経験されていて、とにかく可笑しいものだ。


小田さんの前半の話では、カースト制度は魂の成熟度状態を表すというのが、耳に痛かった。私はシュードラで心(感情)の奴隷らしい。引用させてもらうと、


 めんどくさかったらやらない、眠かったら寝る、そのときの気分に左右されるから、なかなか物事が続かない、だから技術や知恵が身につかないー


うん、その通りである。
やりたくないことは無理してやらなくていいとは思うのだが、小田さんが後に続けられているように、シュードラは、要約すると、
今の場所の居心地が良くて、新しいことに挑戦せず、「今のままでも、まぁいいや」ってごまかすので、新しい世界へ踏み出しにくい、
ということらしい。ますます、耳が痛い。うさぎの耳は長いのだ。


私も、現状維持の生活から抜け出して、皆さまにいろいろと分けることができて、幸せをいただくような生き方をしてみたい。現状維持もやっとのことで難しいが、お釈迦様も福の神(貧乏神と同一とも言われる)も、まず貧乏な家へ行って托鉢やら一晩の宿を求めたという。手持ちのものがなくても出すことで福は得られる話は何度も聞いたことがある。
同じ貧乏神でも、にちぎんそうさいにだけは、来て欲しくないなあ。


*クエストカフェ インタビュー No.37
小田真嘉さん  「お裾分けを少しずつ回せば、善循環スパイラル
話が前後してしまったが、このタイトルの前「社長の心の状態が、全部会社に反映されている」でカースト制度の話。