2012年2月14日火曜日

Anime Salveとハドリアヌス帝の詩

animula vagula blandula 
hospes comesque corporis 
quae nunc abibis in loca 
pallidula rigida nudula 
nec ut soles dabis iocos!

 彷徨う愛しき小さな魂
我が体の客であり、伴侶
汝はこれからあの場所へと向かう
青ざめ、こわばり、衣を脱ぎ捨て
これまでの楽しみはもうないのか




ハドリアヌス帝が死の直前に読んだとされるラテン語の詩です。
家人が訳してみました。
目にする訳の大部分は、第4行の形容詞三つが第3行の終わりの「場所」に掛かります。
ユルスナールの『ハドリアヌス帝の回想』を訳した多田智満子さんは、冒頭にその一般的な解釈をとり
「青ざめ こわばり 露わなるあの場所に」訳されています
でも、
後書きでは上記のような「魂」に掛かると解釈する可能性にも触れられています。
Wikipedia(J)でも、場所ではなく、魂に掛けています→ハドリアヌス 3.最後の詩。
この項を書かれた方が参照にしたのが藤澤道郎氏の『物語イタリアの歴史Ⅱ』だそうです。藤澤先生の「皇帝ハドリアヌスの物語」は、こちらから読めます。訳詞は3ページ目。
                 


ハドリアヌス帝は、確かアテネオリンピックの時に、NHKで「ローマ皇帝の歩いた道(後編)」を見て、その政治手腕、建築のセンス、ティボリの別荘、複雑とされる性格に惹かれました。
その後、気になって検索しましたが、それに当たる番組の感想を書いた人はいなくて覚え間違いかと思っていました。昨年、また検索すると、何度も再放送をしていたことがわかりました。


ユルスナールの『ハドリアヌス帝の回想』は一時期持ち歩いてこつこつと読んでいました。文学作品としては素晴らしく、実は大変思い出深い作品でもあるのですが、あの特集番組のほうが、ハドリアヌス帝は強く印象が残っています。
『テルマエロマエ』というヤマザキマリさんのコミックにも、ハドリアヌス帝は登場します。
ファブリツィオ・デ・アンドレのanime salveと共に思い出される詩です。