2012年3月6日火曜日

Fabrizio De AndreのAnime Salveより「Dolcenera」

イタリアのファブリツィオ・デ・アンドレの「Dolcenera」。これは、ファブリツィオの最後のアルバム「Anime Salve」(救われし魂、1996年)の中の一曲で、私は、女性コーラスから始まり、同じくコーラスで終わるこの曲が好きである。アコーディオンが切ない響きを奏でる中、ファブリツィオが畳みかけるように歌う、「Anime Salve」の中でも強く印象に残る曲である。
でも、ジェノバ方言が混じったこの歌は何を歌っているのか分からなかった。語学に堪能な人たちに聞いてみても、分からないと言われた。単語や文法が分かれば、意味が通っていく文章ではないらしい。これはメタファーに満ちた詩であり歌であり散文でもあるので、何を意味しているのか測りかねるようだった。


ところが、YouTubeにファブリツィオ・デ・アンドレの曲もたくさんアップされるようになり、この曲には洪水のシーンが合わせて付けられているので、驚いた。動画の説明やコメントを見て、ようやくこの曲は、1970年10月7日と8日にジェノバを襲った大洪水を歌ったものだとわかった。
ファブリツィオが生まれ育ったジェノバは、何度も洪水に見舞われているそうで、昨年11月にも大洪水が起きている。


洪水とは意外も意外だったが、これで一挙に詞の意味がわかるかもと期待した。だが、そんなに簡単なものではないようで、ファブリツィオの曲の中でも、最も深遠で難解な詞の一つだと書いてあるコメントあった。
検索しては、Google翻訳を頼りにあちこち読んでみた。迫り来る洪水の状況とともに、恋人たちの話が平行して語られているようだ。アンセルモの妻と彼女に恋人する男。ところが、大洪水とこの二人の愛が暗示するものが何か、その肝腎なところが分からない。アンセルモの妻は恋人に会いに家を出たようなのだが、洪水に巻き込まれて会えなかった。だが、男の頭の中では、彼女が来てくれているところを夢想しているらしい。 
ファブリツィオ自身がコンサート中にこの曲を解説したものが、Anime Salve」(イタリア版ウィキ)の中にある。だけど、そのGoogle翻訳を読んでもわからない。また、ファブリツィオの息子のクリスチアーノが、昨年11月の洪水被害に見舞われた市民のためのショーで、この曲を解説している動画もあるのだが、イタリア語が分からない。早い話がイタリア語を勉強すればいいのかな。


音楽は心で感じられる部分に加えて、やはり言葉の理解や背景にあるテキスト(歴史、文化)があれば、見えてくるものがあったり、共感が深まっていく。だけど、私はこの曲の深遠なところには行き着けなくても、それでまあいいかなと思っている。
まずは、歌がドラマで良かった。繰り返し聞いても、曲が終われば、その都度、目に見えていた光景は消えてなくなってしまう。いつまでも終わらない悪夢ではない。そしてまた何度も聞くと、だんだん見えてくる光景も変わってくるかもしれない。



途中経過で、いつ解釈のどんでん返しがあるか分かりませんが、
友人の訳やGoogle翻訳を参考にしてまとめた、
次の訳詞を掲示しておきます。

Fabrizio de andre
「Anime Salve」
Dolcenera



ライブ





Amìala ch'â l'arìa l'aria cum'â l'é
見て、やってくる、どんな様子?
amiala cum'â l'aria amia ch'â l'é lê ch'â l'é lê
どんなふうに来るか見て、あれでしょ、あれね
amiala cum'â l'aria amìa amia cum'â l'é
どんなふうに来るか見て、どう?
amiala ch'â l'arìa amìa ch'*a l'é lê ch'â l'é lê
見て、やってくる、あれよ、あれよ

Nera che porta via che porta via la via
黒い水が運び去る。通りを運び去る
Nera che non si vedeva da una vita intera
生まれてから今までに見たことがない黒い水
cosí dolcenera nera
ほんとうに黒いドルチェネラ
Nera che picchia forte che butta giù le porte
強くぶつかる黒い水、ドアを破る黒い水


Nu l'è l'aegua ch'à fá baggiâ
あくびをさせるような水じゃない
imbaggiâ imbaggiâ


Nera di malasorte che amazza e passa oltre
限界を超えた災いの黒い水
Nera come la sfortuna che si fa la tana
災いの黒い水
dove non c'è luna lunaNera di falde amare che passano le bare


Âtru da stramûâ
 nu n'á â nu n'á

Ma la moglie di Anselmo non lo deve sapere
しかし、アンセルモの妻は知らなくていい
che è venuta per me
私のために来てくれたことを
è arrivata da un'ora
1時間前から来ている
e l'amore ha l'amore come solo argomento
独り言のように愛には愛がある
e i tumulto del cielo ha sbagliato momento
天災は時を間違えた


Acqua che non si aspetta altro che benedetta
予想もしなかった水、祝福されるものではない
Acqua che porta male sale dalle scale
水が階段から塩水を運んできた
sale senza sale
塩のない塩水
Acqua che spacca il monte che affonda terra e ponte
山を崩し、大地も橋も沈める水だ

Nu l'è l'aegua de 'na rammâ
'N calabà 'n calabà  


Ma la moglie di Anselmo sta sognando del mare
しかし、アンセルモの妻はまだ海の夢を見ている
quando ingorga gli anfratti si ritira e risale
彼が隙間に物を詰めて水を止め、上がっている時
el il lenzuolo si gonfia sul cavo dell'onda
波頭の上でふくれるシートに
e la lotta si va scivolosa e profonda
奮闘するのだが足を滑らせ水に深く沈む

Amìala cum'â l'arìa a,ìa cum'â l'é cum'â l'é
amiala cum'â l'aria amia ch'â l'é lê ch'â l'é lê

Acqua di spilli fitti dal cielo e dai soffitti
天から降るくさびのような水
acqua per fotografie per cercare i complici da maledire

水、写真を見れば呪いの共犯者が捜せる
Acqua che stringe i fianchi tonnara di passanti

通行人の脇腹を締め付ける水


Âtru da camallâ
 nu n'à â nu n'à


Oltre il muro dei vetri si risveglia la vita
ガラスの壁を越えると彼を目覚めさせる

che si prende per mano
手を使って掴んだ命は
a battaglia finita
戦いを終えた

come fa quiesto amore che dall'ansia di perdersi
ha avito un giorno la certezza di aversi


Acqua che ha fatto sera che adesso si ritira
bassa sfila tra la gente come un innocente
che non c'entra niente
fredda come un dolore Dolcenera senza cuore

無慈悲なドルチェネラ


atru da rebellâ
 nu n'à â nu n'á


E la moglie di Anselmo sente l'acqua che scende
そしてアンセルモの妻は水がひくのを感じた
dai vestiti incollati da ogni gelo di pelle
ずぶぬれになった服から
Nel suo tram scollegato da ogni distanza
電車 遠く
nel bel mezzo del tempo che adesso le avanza
cosí fu quell'amore dal mancato finale
cosí splendido e vero da potervi ingannare



Amìala ch'â l'arìa l'aria cum'â l'é
見て、やってくる、どんな様子?
amiala cum'â l'aria amia ch'â l'é lê ch'â l'é lê
どんなふうに来るか見て、あれでしょ、あれね
amiala cum'â l'aria amìa amia cum'â l'é
どんなふうに来るか見て、どう?
amiala ch'â l'arìa amìa ch'*a l'é lê ch'â l'é lê
見て、やってくる、あれよ、あれよ




2012.1.26
昨年11月ジェノバの洪水被害に
見舞われた家族のためのショーで